離婚や不倫の慰謝料請求と時効

不倫が原因で離婚となる場合に、夫婦間でその慰謝料の請求をいつまでに行うべきかという問題があります。
通常は離婚と同時に慰謝料請求や財産分与を行うものですが、事情があってそうした清算手続が遅れることもあります。

 

例えば、離婚協議が長引いて慰謝料請求を保留にしたまま離婚をしたり、離婚後に元配偶者の不貞行為の事実が発覚する場合などです。

不貞行為の慰謝料請求権は、民法709条・710条の不法行為規定に基づくものであり、不貞行為の事実を知ったときから3年以内に行使しなければ時効により消滅します。(民法724条)
配偶者と交際をした不貞行為の相手方への慰謝料請求権についても同様です。

 

しかし、不貞行為が原因で夫婦関係がぎくしゃくしたものになっても、離婚を決意するまでに3年以上経過してしまうこともあります。

そのようなケースでは、離婚時に有責配偶者に対して慰謝料請求が行われず、離婚後に請求ということになることもありますが、この請求権には時効の問題があります。

 

民法159条では、夫婦の一方が他の一方に対して有する権利(慰謝料請求権など)については、婚姻解消の時から6ヶ月を経過するまでの間は時効が完成しないと規定されています。
つまり、離婚の日から6ヶ月以内に請求の行動を起こせば慰謝料請求は認められますが、この期間を経過するとその請求権は時効により消滅するということです。

 

慰謝料の請求を行う側としては、離婚後6ヶ月以内に、慰謝料の請求、その協議、合意内容の書面化が必要になります。
協議が長引きそうであれば、内容証明郵便で請求を行って時効の進行を一時中断させ、その間に裁判手続を行うことも視野に入れる必要があります。

 

そうした慰謝料請求について、時効による消滅を図る場合には、離婚の日から6ヶ月を経過してから内容証明郵便で時効の援用手続を行い、消滅時効を完成させることが必要です。
(離婚後6ヶ月以内の時期に時効の主張を行うと、相手方がこの期間に時効の中断を図る措置をする可能性が生じるので、時効援用は6ヶ月を経過するまで待つ必要があります。)

 

また、慰謝料請求が無い協議離婚の場合は財産分与の割合が問題になりますが、この財産分与についても離婚が成立した日から2年が経過すると請求権が消滅します。(民法768条2項)

 

このように離婚や不貞行為の慰謝料請求、財産分与の請求には時効があるので、これらの請求をしたいとお考えなら、早い段階で請求手続をしなくてはなりません。
協議をして支払い方法などが決まっても、それを口約束で済ませていては証拠が残らないため、後で問題になるリスクが高くなります。

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※本ページで記載した民法の条項と時効期間等は、民法改正により変更される予定ですが、法案審議や周知期間があるので当面の間は本ページの内容が適用されます。

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