示談書を作成するときには、その内容に最大の注意をする必要があります。
使用する印鑑やプリンター印刷など、形式は二次的な問題です。
示談書の作成について次のような質問を受けることが多いです。
「示談書に必要なものは印鑑の他に何がありますか?」
「手書きでも大丈夫ですか?」
「示談書を作らないと不都合はありますか?」
これに対する回答としては次のようになります。
「示談書と印鑑」
印鑑は法的義務ではありません。
印鑑がなくても署名等で両当事者の同意が確認できれば契約書として有効です。
ただし、裁判所や第三者に事実証明の書類として提出して通用するものにしたい場合は、署名と捺印をするべきであり、実印を使用して印鑑登録証明書も添付したほうがよいです。
「手書きでよいか?」
手書きでもプリンターで印刷したものでも法的効力に影響はありません。
つまり、どちらでも可です。
ただし、どちらでの場合でもあまりに誤字脱字が多かったり、訂正箇所が多すぎる等の不備があるときは効力が否定されるリスクもあります。
第三者が見て理解しやすいものに仕上げるにはプリンター出力の方が無難です。
「示談書を作成しない場合の問題」
口約束だけでも当事者同士の合意があれば契約は有効です。
ただし、後日になって相手方の気が変わった場合には、口約束の内容を証明できないため困った事態になるリスクが高くなります。
このように印鑑や手書き等の形式を気にされる方は多いのですが、肝心の示談書に書く内容をほとんど検討していないケースも多く見られます。
単に謝罪の言葉と賠償金の金額だけを書いて、あとは日付と署名と印鑑でおしまいという示談書を見せてもらうこともあります。
さすがにそこまで簡略なものだと、後からのトラブルを予防するという効果はほとんど期待できません。
相手方がちょっと機転を利かせれば契約内容を否定できてしまうような内容では口約束とそれほど変わらないということです。
そこで示談書を作成する場合には、次の事項を明確に記載する必要があります。
事件の経緯(概略)
損害の内容
示談金の金額と支払い方法
再発予防の対策(これが一番大事)
示談内容に違反した場合の罰則設定
当事者が未成年者の場合は、親権者の同意や監督
約束する事項に期限がある場合は、その期間
これらの事項に漏れがないように条件を書き出さなくてはなりません。
また、示談は相手の同意があって初めて成立するものですから、あまりに一方的な内容にすると反発されて決裂してしまうリスクがあります。
自分の権利は明確にしつつも、互いに守るべき義務も定めて相手方の不安も解消する配慮も必要です。
特に加害者側の立場では、被害者の神経を逆なでしないような文言の選び方もしなくてはなりません。
こうした内容を吟味して、互いに不安が残らない示談書に仕上げるようにしましょう。